サンゴの産卵
すべてはこの産卵からはじまる。
突き出た海底火山の岩礁の固まりを、波が洗う日々があり、南洋から流れ着いたサンゴの卵が育まれる。
やがてサンゴ礁を形成するまでに増え、地殻変動による隆起と陥没を繰り返して、苔が生まれ岩が風化して土になり、そこに野鳥の糞に含まれた植物の種子が発芽する。平地ができ、於茂登山が得た保水力がゆっくり海に放つ水の流れが、山の栄養分の移動を生み出し、陸上生物の繁栄がはじまる。
八重山の島の平地を形成したサンゴは、山からの水脈を地上と地下で様々に生み出して、多様な生物を育くむ。もちろん亜熱帯の強い日差しは、緑を濃くして、現れる野鳥も多彩となり、運ぶ植物の種子もなおいっそう増える。豊かな島は相乗的な自然の奇跡の集大成だった。島が潤い、海もまた豊かな栄養分を貯めるマングローブや、サンゴが生み出す小魚の天国と、それを求めたあつまる魚たち。八重山の生物層の軸には、このサンゴの存在は大きい。
